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黒澤明 「隠し砦の三悪人」 [映画]

 

 黒澤明監督作品  隠し砦の三悪人(1958)


「勧進帳」と「ローマの休日」の融合に成功した奇跡の快作

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クロサワは考えた。

「勧進帳」の義経を “王女” に変えたらどうなるか。

そして、その王女が 「ローマの休日」のヘップバーンのような

可憐で魅力的な姫君だとしたら・・・・。

「隠し砦の三悪人」は、戦国の世を舞台に 映画の天才が

詩情豊かに
描きあげた 痛快アクション時代劇巨編である。

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【解説】

48歳の黒澤が初のシネマスコープに挑み、冒頭からラストまで
大画面を見事に活かし切り、世界を驚かせた時代劇大作。


欧米では、西部劇を除く “時代劇”を 「コスチュームプレイ」と称し
一段低く見ていたが、「羅生門」「雨月物語」に出会ってからは
“ジャパンの時代劇だけは別格である” と東洋の神秘に驚きつつ
尊敬の眼差しを向けるようになっていた。
当然ながら、黒澤明も そのことは承知していたし 意識もしていた。
「羅生門」以後も 「七人の侍」、「蜘蛛巣城」、「どん底」 と芸術性
豊かな時代劇を立て続けに発表し、内外の期待に応えてみせた。



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そんな作品群に続いて発表されたのが 「隠し砦の三悪人」である。
しかし、映画は これまでの“黒澤映画”とは どこか様子が違っていた。
1958年は、テレビの台頭で、
もはやこれ以上の観客動員は望めない
という、いわゆる “翳りの兆し” が囁かれ始めた年だ。
時代の空気を敏感に察知した黒澤は、老若男女 誰が観ても楽しめる
“面白い映画” を作ることで、この危機を乗り越えようとした。
シネマスコープの採用も、そんな黒澤の意思を反映したものだった。


サイズアップした映像に呼応するように、これまで特徴的だった
「苦悩する人物像 ・陰影に富んだ悲劇性」から距離を置き
ポジティブな明快さが強く印象に残る “痛快な娯楽映画”への
転換が図られた。
そんなエンタテインメント要素が強調された映画のトップバッター
として登場したのが 「隠し砦の三悪人」である。
“映画の天才” による「偉大なショーの幕開き」だった。




しかし、ショーとは言え そこは “世界のクロサワ”のこと、完成した
映画は卑俗な見世物に堕すことはなかった。
全被写体に注がれた凄まじい情熱、名画を切り取ったような凝りに
凝った構図、絶妙のリズムで編集されたカット・・・・それらはすべて、
この映画が 紛れもない “クロサワ映画”であることを証明していた。


 


冒頭からラストまで、全編にみなぎる絵画的モンタージュの豊穣さ。
そして、それら豊かなイメージが躍動する映画美・・・・それはまさに
モーションピクチュアの極致だ。
画家出身の映画作家が 全身全霊を傾けて “フィルムに描き込んだ”
畢生の戦国絵巻は、半世紀を過ぎた今日でも、まばゆい光芒を放ち
観る者を魅了し続けている。

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     ◆   ◆   ◆ 

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脚本も 凝りに凝っている。
黒澤は 3人の脚本家とともに、手に汗握る見事なオリジナル脚本
を書き上げた。
待ち受ける数々の難関を如何に突破するか、という難題に対して、
苦心を重ねながら、究極の打開・突破法を練りあげていったのだ。

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「関所の突破」 といえば、終戦の前後、「勧進帳」を下敷きにした
「虎の尾を踏む男達」(1945)いう傑作をものにしていた黒澤は、
機会があれば 潤沢な製作費を使って、さらに面白いものを撮って
みたいと思っていた。


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その夢は、13年後に実現する。
“下敷き” とは言うものの 「隠し砦の三悪人」が「勧進帳」から
頂いたのは そのバックボーンのみ。
つまり「主君と家臣が敵中突破する様をサスペンスフルに描く」
という主題(モチーフ)だけを借りる形になった。
「虎の尾」で富樫を演じた藤田進が、再び “富樫的人物” として
登場するが、これは黒澤一流のユーモアだろう。


 

なお、 「三悪人」 という題名は 内容にそぐわないのでは?
と言う人が少なくないが、これは、ある映画へのオマージュとして
付けられたもので、それ以上の深い意味はない。
その映画とは、黒澤が 終生兄の如く慕ってやまなかった巨匠
ジョン・フォードが1926年に撮った 「三悪人」 である。

「隠し砦」には、W・ワイラーとともにハリウッドに君臨する巨人
(黒澤明にとっては 敬愛する兄貴)への強い私淑(ししゅく)と
親愛の気持ちが込められている。

フォード三悪人.jpgジョンフォード.jpg
   
  

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映画の “見せ場” として ここにすべてを書き出すのは、あまりに
多すぎて諦めざるを得ない。
それでも一例を挙げるとなれば、反乱を起こした捕虜(人夫)たち
の反乱・脱走シーンでは、黒澤の類い稀な造形力が いかんなく
発揮されていて、観る者に強烈な印象を与えている。

脱走.jpg 


 

殺陣を交えたアクションでも、突出した演出力と完璧な編集に
観客は息を呑んだ。
それらを見慣れた現代の観客も、その斬新な発想と表現力を
堪能するに十分だろう。



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特に、三船敏郎 が馬を駆って逃げる騎馬武者を追い、馬上斬り捨てる
疾走シーンは凄まじい迫力で、今どきの若者たちも 口をあんぐりと開け、
“驚愕ア然” と観賞していた。
また、
最後の見せ場、田所兵衛(藤田進)による有名な「裏切り ご免!」
のシーンでは、六郎太(三船)が百姓娘を さっと馬上に引き上げながら
雪姫とともに颯爽と走り去るが、ここでも黒澤演出は冴え渡り、映画館
全体がひとつになる。

◆スターウォ-ズ
http://members.jcom.home.ne.jp/o-belle/starwars.htm

また、凸凹コンビの百姓を演じた 千秋実 と 藤原釜足・・・・・・この二人が
「スターウォーズ」のロボットコンビ(R2-D2とC-3PO)の原型であることは
よく知られた話だが、本家本元の二人のほうが はるかにエグい!(笑)
“人間くさい” というには 余りに強欲な人間の一典型を、黒澤は神の視点
から、鋭くも 温かい眼差しで描き出す。



そのデフォルメの利いた鮮烈な人間像は、もはや映画のカテゴリーを超え、
“文学の領域” に達していると言っていい。
それは、いわゆる脇役であるはずの二人が、深い文学的素養を持つ黒澤
によって、主役に拮抗する彫りの深いキャラクター(強烈な個性)の持ち主
として しっかり描き込まれた所から来ている。



 

     ◆    ◆    ◆     


しかし、何と言っても 世間が注目し 書き立てたのは 雪姫だった。


「雪姫」を演じた上原美佐 は演技こそ未熟ながら、その凛々しい所作・言動が、
抜群のプロポーションもあいまって 鮮烈な印象を残した。

  
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「七人の侍」が発表された1954年以降、アメリカを代表する映画監督
ウィリアム・ワイラーと親交を深めていた黒澤明は、ワイラーの偉大な
作品「ローマの休日」に敬意を表し、作品への究極のオマージュとして
「可憐な王女(姫)を主役に据えた戦国冒険譚」という企画を思いつくが、
その実現には どうしても越えねばならない大きな壁があった。 それは
ヘップバーンに匹敵するフレッシュで魅力的な女優を発掘する という
至極シンプルな難題だった。





黒澤が残した制作ノートに「雪姫」のイメージが記してある。
上原美佐に決定する以前の記述で、要するに採用基準

風姿可憐。気品があり 言動常に凛とす。
玲瓏な外見に反し 意志の強い激情家。 
決断が早く行動的=野性的(活発かつ敏捷)。
内面に“健気な使命感”を秘めている。




これを読むと、雪姫役の選考が いかに難しいものになるか、
その困難を予感させる。
また、「雪姫選考の成否」そのものが 作品の成否のカギ
握ることも、脚本を読まずとも十分想像できるだろう。




戦国の世に咲いた一輪の名花 ・雪姫には、オードリー・ヘップバーン
に対抗できるビジュアルを求めて、郵送公募を含め4000人にのぼる
大オーディションが敢行された。
 
しかし、どれだけ探しても黒澤のメガネに叶う女性は現れなかった。
そんな時、全国に網を張っていた東宝の関係者が、地方の映画館で
ひとりの若い女性を見いだし、黒澤に写真を送った。
写真には 「素人さんですが、凛々しい横顔に思わず声をかけていま
した。話してみて 意志の強さを感じました。一度会ってみませんか」
というコメントが添えられていた。
写真の女性は、強烈な目力(めぢから)でこちらを見ていた。
その目には、(他の応募写真と違って)媚びたところが全く無かった。
黒澤は、この二十歳の短大生に会ってみたいと思った。
そして・・・・彼女に会って しばらく話をした後、こうつぶやいた。
この娘(こ)には “気品”と“野性味”、両方 ちゃんとあるね・・・
彼が発したこの言葉が、長かったオーディションの終わりを告げていた。

雪姫②.jpg
カメラテスト(スナップ) 


そんな経緯から、新人・上原美佐を起用することになったが、
その説得は 親の反対もあって大変だったそうだ。
しかし、本当の苦労はそこから始まる。
彼女の最大の難点は “演技経験がない” ことだった。
撮入前の黒澤によるマンツーマン指導は 数十日に及んだ。
それは、“人形に命を吹き込むような” 絶望的な試みだった。
しかし黒澤は その難事に敢然と挑み、見事成功する。
完成した映画を観て、皆 稀代の演出家の成し遂げた“奇跡”に
目を見はった。

「雪姫」の独特の存在感と凛々しい立ち振る舞いは今も語り草に。

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後年、黒澤は こう述懐している。

ワイラーの「ローマの休日」は 単なる色恋ものではないと思う。
生まれて初めて城を出た王女は、世間を見聞し さまざま体験
していく中で、人の醜さ、美しさ、人の世の儚
(はかな)さや矛盾
など 多くのことを理解できる大人
へと成長していったんじゃない
かな・・・(中略) もちろん 恋愛は重要な要素だったと思うけど
ワイラーはそこにとどまらず、さらに踏み込んでいっているよね

だからこそ 永い間 「ローマの休日」は、たくさんの人に愛され
支持されてきたんだ と思っている。
この写真
(映画)でも、単純な冒険活劇じゃなくて、つらい脱出行
を通して、狭い世界しか知らずに育った雪姫が 広く世間を見聞
することで大人へと成長していく所を しっかり描きたかったんだ。
まァ あえて言うなら、ボクが「隠し砦」で表現したかった柱のひと
つは それだった。
上原君は女優の経験がなく、本人もずいぶん苦労したようだが、
素直な子でね、吸収も早かった。 だから、撮影が進むと日増し
に良い芝居(演技)を見せるようになっていった。
それが雪姫の成長と重なって見えてね、うれしかったよ。



 

         
     


 

この映画で脚光を浴びた彼女だったが、数本の映画に出演したあと、
完全に映画界を引退してしまう。




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ここで余談をひとつ。


「雪姫はナチュラルな感じのメイクにしたら もっときれい
なのに・・・・ちょっと、もったいないと思う」
この映画を観た若いメイクアップアーティストが、いかにも惜しい
といった
口ぶりで こう言った。
まあ シロウトの女の子が この手のことを言うならまだ分かるが、
仮にも “メイクのプロ” を名乗りたいのであれば、もう少し勉強
してほしいなァ。

えっ? 何の勉強かって?
もちろん 能で使う「能面」について、です。

雪姫の あの“一度見たら忘れられない印象的なメイク” には、
黒澤の「能」に関する深い造詣と緻密な計算が秘められている。


4悪人.jpg



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雪姫は “わがまま放題” に育った。
馬にも乗るし、武芸もたしなむ活発な姫君だ。
しかし国敗れた今、世継ぎの姫として、お家再興のため
生きて領外に逃れなければならない。
それだけが、今の彼女に与えられた唯一の使命だった。





雪姫は その逃避行の過程で人生の豊かさと厳しさを知り、
人の情に目覚め、大きく成長することになる。
その護衛役として、十人力の知力、腕力、胆力を持つ家臣
真壁六郎太(三船敏郎)が 獅子奮迅の活躍を見せる。   

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馬馬1.jpg
馬上格闘.jpg




しかし、フィクションとはいえCGなどない時代、スタントマンも
立てず、“実写”で監督の厳しい注文に応え やり抜いた三船
のプロ根性には、ただただ敬服するほかない。
次々に遭遇する絶体絶命の危機を間一髪で切り抜ける三船
の勇姿には、 現代のひ弱な俳優たちには決してマネの出来
ない凄みがあった。


 

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さらに、この映画には 単なる“アクション映画”にはない妙味
(深い味わい)・・・・・・ 一人の少女が大人へと成長する過程
を優しく見守る 黒澤の確かな眼差しがある。
その眼差し(視点)は、「姿三四郎」から「赤ひげ」に至るまで
一貫していて 変わることがなかった。



 

       

【雨宿り】


寝ている雪姫と策をめぐらす真壁六郎太。

直後、六郎太が味噌樽を調達するために この場を離れる。

残るは、熟睡中の雪姫と好色な百姓たち。

彼女が寝ているのは、ひとつの観客サービスでもある。
とびきり白くて美しい太ももが、この場面で惜しげもなく “どアップ” される。
正直ここまで見せなくても と思うぐらいの出血大サービス(笑)
(黒澤のサービス精神は世界一です!)


その太ももを見せつけられて、男たちはムラムラしてくる。
ああ、雪姫危うし!




ここでも、黒澤の造形力と演出力がいかんなく発揮されている。
その演出は 「エロティシズム表現のお手本」 と絶賛された。




 

火祭り②.jpg 隠し砦②.jpg


生まれて初めての「火祭り」に感動し、その歌を忘れがたく思って
いた雪姫が、囚われの身となって死を覚悟したとき “辞世の歌”
の趣きで 朗々と謡う場面。


(きっぱりと)もうよい! 志は有り難いが これまでじゃ
・・・・姫は潔く死にたい」
「姫! 六郎太 申し訳も有りませぬ。 姫の身には
堪えがたいこれまでの苦難・・・その甲斐もなく・・・・」
「ちがうぞ六郎太!  (すがすがしく)
姫は楽しかった」
「?」

(遠くを見るような目で)
  この数日の楽しさは 城の中では
味わえぬ。 装わぬ人の世を・・・人の美しさを・・・人の
醜さを・・・この眼でしかと見た。六郎太 礼を言うぞ!
これで姫は悔いなく死ねる」
「姫!」
「六郎太! (目を輝かせ)
ことに、あの祭りは面白かった
・・・・あの歌もよい」

隠し砦③.jpg

雪姫、朗々と謡い出す。
「人の命は 火と燃やせ・・・・・蟲の命は 火に捨てよ
思い思えば 闇の夜や ・・・・・浮世は夢よ・・・・・」

一同 粛然となる。


この 山名の火祭り歌 は、黒澤自(みずか)らが作詞した。

雪姫が朗々と謡う歌に心打たれた田所兵衛(たどころひょうえ)が、
土壇場で “裏切り”の重大な決断をするに至るが、きわめて簡潔
な言葉で 人間の実存 浮世の無常 という二律背反的概念を
融和させた謡詞は、その文学的哲学性と完成度において 比類
なき傑作詩と言われている。 


人の命は 火と燃やせ!

       蟲の命は 火に捨てよ!

思い思えば闇の夜や

       浮世は夢よ ただ狂え!


隠し砦.jpg


。 
◆Aさんのレビュー
最高のエンターテイメント映画です。
プロットが奇抜かつ巧妙で、登場人物もしっかりと色分けされており、
昨今の退屈な時代劇とは、はっきり一線を画した魅力があります。
緩急のつけ方や間の取り方が絶妙で心地よく、爽快な気持ちになれる
のです。 正直、こんな映画体験は滅多にできませんよ。
“スターウォーズ・フリーク” からすれば、隠し砦の奥からオビ・ワンが、
森の泉の奥からヨーダが出てきそうで、思わずニヤリとしました。
でも 同時に 「スターウォーズ」も「インディジョーンズ」も この映画には
遠く及ばないなァ と思ったのも事実です。
三船敏郎が、三十郎で一世を風靡する数年前の作品で、落ち着きの
なかの “ギラギラ感”も またグッド。
特に、馬上の三船に しびれました。 ホント 映画館で見たかった~!
映画館で観た人によると、娘を馬上に上げるシーンでは、“拍手喝采”
だったとのこと。日本映画最盛期の傑作の一本でしょうね。
登場する人物は 皆キャラが立っていて、お間抜け百姓二人組も 実に
いい味を出しています。この二人、かっこいい行動など全く取りません。
エゴむき出しで、しかも かなりのお間抜け。それなのに 全く厭らしさが
ないし愛嬌さえ感じます。(三船とのコントラストが鮮やか!)
「七人の侍」でも感じたんですが、黒澤監督は武士と百姓を絡ませたら
本当にうまい。彼の手にかかると、どのキャラも生き生きと輝き始める。
それはきっと、作る側に “見下した視点がない” からなんでしょうね。
「美しいも醜いも あるがままに見る」……これって 簡単なようで難しい。
あと レイア姫 …じゃなくて、雪姫!
彼女じゃなきゃ、この映画の魅力は半減したと思います。
20年前に見たときは、ここまで面白いとは思わなかったんですけどね。
「字幕付き」 で見たのが良かったのかな(笑)


◆Bさんのレビュー
群集シーンの迫力、機略・機知に富んだ展開、キャラクターの普遍性、
ロケーションのスケール感、人間臭い個性のにじみ出るような役者の
存在感、全体の質感など、そのどれをとっても超一級品と言わざるを
得ません。 50年たった今観ても全然輝きが失われていないし、今を
生きる役者の、誰を どこに当てはめてみても、ここまでエネルギッシュ
な作品にはなり得ません。 そんな荒削りで勇ましい、この時代の持つ
圧倒的な 「力」 にも脱帽です。
黒澤映画の 他の追随を許さない高水準を支えていたのは、黒澤明を
中心に、 菊島隆三、小国英雄、橋本忍ら、優れた脚本家集団が創り
出す脚本だったんだなァ と、改めて痛感させられました。

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◆名レビュー満載!
http://www.discas.net/cgi-bin/netdvd/s?ap=c_goods_detail&goods_id=080164438



隠し砦④.jpg
【ラストシーン】 苦労を共にした二人の労をねぎらう(右から)真壁六郎太、雪姫、田所兵衛。 




上映時間 139分
1958年(昭和33年)12月28日公開

監督: 黒澤明
脚本: 黒澤明・菊島隆三・小国英雄・橋本忍
撮影: 山崎市雄
美術: 村木与四郎
音楽: 佐藤勝

【出演者】
三船敏郎(真壁六郎太)
上原美佐(雪姫)
千秋実(太平)
藤原釜足(又七)
藤田進(田所兵衛)
樋口年子(百姓娘)
三好栄子(めのとの老女)
志村喬(長倉和泉)
藤木悠(関所の番卒)
笈川武夫(関所の番卒)
土屋嘉男(早川方の騎馬侍)
高堂国典(立札前の男)
加藤武(落武者)
三井弘次(山名の番卒)
小川虎之助(橋の関所・奉行)
上田吉二郎(人買い)


隠しとりで.jpg


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【追記】

リメイク情報
黒沢明監督の名作「隠し砦(とりで)の三悪人」が50年ぶりに再映画化され、嵐の松本潤(24)が主演することが10月28日発表された。オリジナルは、「スター・ウォーズ」に大きな影響を与えたと言われる傑作時代劇だが、その魅力を継承しながら新解釈を加えた娯楽作品を目指す。ヒロインを長沢まさみ(20)が演じるほか、阿部寛(43)宮川大輔(35)が共演。メガホンは樋口真嗣監督(42)がとる。 東宝配給で来年5月10日公開。58年公開「隠し砦の三悪人」は、ジョージ・ルーカス(61)の「スター・ウォーズ」シリーズの原点とも言われる。男勝りの姫の救出劇と敵中突破という展開もさることながら、三船敏郎が演じた主人公の侍大将に巻き込まれる形で物語に加わる2人の農民が、ロボットコンビのC- 3POとR2-D2のモデルになった。50年ぶりによみがえるリメイク版は、農民を山に住む民衆という設定に変えた上、その1人を主人公とした。「日本沈没」を昨年ヒットさせた樋口監督は、「現代の観客に向けて、フリーターやニートに代表されるような、自分のよりどころを探す若者の姿を反映する設定にしたかった」 という。主演は人気グループ嵐のメンバー松本潤が起用された。時代劇は初挑戦。同監督は04年の映画「東京タワー」を見て「ナイーブで反抗的で野性的な魅力を強く感じた」。 ヒットドラマ「花より男子」のセレブ王子様のイメージを覆すワイルドな演技を求めるという。松本は、「全身全霊をかけて挑戦 したい。オリジナル作品をご覧になった方も、お子さんやお孫さんと一緒に見られる、どの世代も楽しめる作品になればと思います」 と話している。オリジナルはスピード感あふれるアクションも見どころだった。同監督は「発展させた形で肉体のぶつかり合いを持てる限りの技術で見せたい」松本も馬術訓練に取り組んでいる。姫を演じる長沢まさみも 時代劇映画初挑戦。同監督は「ナチュラルな役が多かった従来のイメージと大きく異なるキャラクターを演じてもらいたい」。オリジナルにはない、主人公に思いを寄せる設定にもなった。脚色は劇団☆新感線の中島かずき氏が手掛けた。11月1日に撮影開始し 各地で大規模ロケを行う。(2007.10 朝日新聞) 


隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」 (監督:樋口真嗣)

◆ベストレビュー
時は戦国。秋月・早川・山名と 3国がしのぎを削る 山水豊かに広がるところ。山名に突如攻め入られた秋月勢が城外に緊急避難(城に火を放って退却)。しかし山名がどれだけ焼け跡を探しても、秋月の軍資金(黄金百貫)を発見できないでいた。
そんな中、焼け跡堀りの強制労働をさせられていた百姓2人組が騒ぎに乗じて逃走。そこに いかにも怪しい“イカツイ男”が現れ・・・。
オリジナル作品はオイラの中のベスト5に必ず入ってくるほど大好きなので、そのリメイクとなると どうしても辛口にならざるを得ないんだけど、そう思う間もない駄作だったというオチ。。。(笑)
「滅亡の危機にある秋月家の姫君御一行が、お家再興を目指し軍資金を持って敵領内を通って同盟国に脱出する」という設定は面白くならないはずがないので、このリメイクのキモは映像面、特に、監督がCG特撮畑の樋口真嗣だけに、どんだけスケール感たっぷりのスペクタクル映像を見せてくれるのかと期待していたのだけど。。。。いざフタを開けてみたら、満足度は かろうじて50%に届くか届かないかといったところだったので ガクッ!
まあ、いかに黒澤作品が素晴らしくスゴイ映画なのか、ということを実感できたという点では意義のあるリメイクだったのかもしれないけどね。
例えば冒頭、武蔵(松本潤)と新八(宮川大輔)が雪姫(長澤まさみ)を追って岩山を駆け上がると眼下に隠し砦があるというシーン。オリジナルでは、かなり傾斜のキツい瓦礫の斜面を農民の又七(藤原釜足)と太平(千秋実)がヒィヒィ言いながら、時おり足をとられて滑り落ちたりして、そしてなんとかてっぺんまで登ると、思わずのけぞってしまうほどの眼下に隠し砦が小さく見えるという、とにかくこのシーンひとつとっても、CGなんかない時代でも、創意工夫によってスケール感とダイナミックさが出せることを如実に示していて、そこは例えば 「天国と地獄」(1963)なんかでも顕著なんだけど、望遠レンズの使い方や俯瞰ショットの構図など奥行きや広がりを意識した空間の切り取り方、見せ方がハンパなく上手いんだよね。
ところが、この映画では ちょちょいのチョイで岩山を登っちゃうんで 観てるこっちとしてはあれっ?と思っちゃうわけさ。
そう、この映画、そういう あれっ?ていうシーンのオンパレードなのよ(笑)。
見せ場中の見せ場、六郎太の凄みがあらわになる疾駆する馬上での殺陣シーンも作りもの感が否めず、大団円に出てきたドでかい第二の隠し砦での あくせくしたアクションも含めて、生の息遣いが聞こえてこない単なるアトラクションにしかなってないのには心底ガックリ!
さらに、
面白くならないはずがない人物設定を ことさらに面白くなくしてしまう芸当にも ただただア然・・・。オリジナルでコメディリリーフを担っていた又七・太平のうち 片方を若い男にすることで 視点を変えてきたのは悪くはないんだけど、ストーリーを転がしていってくれるコメディリリーフ不在の補填となるべき “キャラクター補強”は脆弱そのもので、 まさか高嶋政宏のホモ代官に笑いの要素を全部詰め込んだわけでもなかろうにww。
まぁ、この監督さんが人間ドラマを描けないのは以前から分かってたことだけど、(主人公を代えたことで)メインとなるはずの雪姫と武蔵のラブストーリーに なんのカタルシスも生み出せないのだから もうどうしようもないわな。 “裏切り御免” ならぬ “斬り捨て御免!”だな。。。


 

 


「相手に正対し 真正面から グッと見据える」
これは、帝王学のひとつの作法である。
雪姫は こういった作法(教養)を完璧に身に付けていた。
だからこそ 統治者の後継たりえたのだ。


対して、新雪姫(長澤まさみ)が その辺の女番長(スケバン)ふぜいに
しか見えないのは、 「チンピラオーラたっぷりのツッパリ少女が斜(しゃ)
に構えてニラミを利かしている」といった人物造形…帝王学から はるか
遠い雪姫像を、樋口監督自身が造形し演出してしまったからだ。
致命的ミスと言わざるを得ない。

ダメ雪姫①.jpg

.

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■黒澤明 ・作品一覧
http://www.moon-light.ne.jp/profile/kurosawa2.htm  

■おまけ  
http://www.conpara.com/


新雪姫①.jpg新雪姫④.jpg新雪姫②.jpg新雪姫③.jpg

。。。

ロマ休4.jpgロマ休5.jpgローマ休2.jpgローマの休日.jpgロマ休3.jpgロマ7.jpg
 (左から)田所兵衛、雪姫、真壁六郎太 の原型となった役モデル  

ロマ休6.jpg


 


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コメント 11

咲

お久しぶりですw

インターネット予約だと、2月のは一般で数席(夜の方が多かったよぅな)残ってましたが、漢検の前日で断念。

3月は以前薦めていただぃた隠し砦の三悪人なので観に行きたぃと思ってますw
スターウォーズキャラが黒沢映画の影響を受けてたなんて初めて知ったのでびっくりです(常識なくてごめんなさぃ・・)

ブログ引っ越しましたが(http://yaplog.jp/crossed-finger/)、これからもよろしくお願ぃします。
by 咲 (2007-01-24 16:39) 

Hiji-kata

●咲さん  
  来てくれて ありがとう。 元気にやってた?
  春になると楽しいことが増えるね。 「隠し砦」 とか v(^^)/
  その前に 「漢字検定」 だね。頑張れ~
  引越しも したんだね。そちらにも、また寄らせて頂きます(^^)
by Hiji-kata (2007-01-24 19:34) 

sysy_sysy

土方歳三 さん、この記事を教えていただいてありがとうございます。
わたしは、3~4年前まで黒澤監督の映画は観ず嫌いだったんですが、ケーブルテレビで「生きる」を観て、うぉ!と感じ入り。
即刻、「七人の侍」をDVDで観ますと、もうはまってしまいました。しかし、「どですかでん」あたりの時代が新し目になった黒澤映画はいまだに観ず嫌いでして。
「デルス・ウザーラ」もソビエト政府全面協力という、封切り当時の大仰な広告に対してなんとなく反感を持ってたんですが、やっぱり観ます。映画館で。
ところで志村喬、「七人の侍」では凄い精悍でカッコいいのに、例えば悪党落ち武者集団に弓矢を射る姿とか、刀を低く持って走る姿とか。他の映画では、役柄上憎たらしい悪役、後世に至っては東宝ゴジラの博士といえば、志村喬(か中村伸郎)という。なんででしょうねぇ、こんなカッコイイ人。
by sysy_sysy (2007-01-25 15:06) 

Hiji-kata

「デルス・ウザーラ」 を初めて観たのは学生の頃でしたが、知恵もなく自然に
対する畏敬の念もない未熟だった私には、この映画の深遠さを十分理解する
には至りませんでした。
思えば、この映画は早すぎた警告でした。「環境破壊」 という言葉はあったこと
はありましたが、言われてピンと来る人など ほんのひと握りでした。
黒澤が制作発表の記者会見で 「私は この映画で “環境保護” を訴えたい」
と語った記事を読み、その浅はかな先入観で映画を観たのが失敗でした。
黒澤の言う “環境保護” とは、他の凡百の主張とはアプローチ自体まるで違った
ものだったのです。
その主張は繊細で静かなものでした。その事に気づいたのは、恥ずかしながら
3回目の鑑賞中でした。
by Hiji-kata (2007-01-25 22:41) 

maki

先日は大変失礼いたしました。
本日、叱咤いただき、どれほど驕っていたか思い知ることができました。感謝いたします。
今日の雨に驕った自分を流し、気配りのできるやさしい女性になるべく改めます。今までありがとうございました。「砦」楽しかったです。 
by maki (2007-06-14 18:07) 

Hiji-kata

maki 様 
コメント ありがとう。
今日から梅雨に入りましたね。
これから 1ヶ月は “恵みの雨”と心に留めながら
日々を送りたいと思います。
決して“恨みごと” など言わず、天に対して感謝の
気持ちを忘れずに・・・・・ね!(^^)
by Hiji-kata (2007-06-14 19:48) 

Hiji-kata

「隠し砦の三悪人」 観ました!!
想像以上に素敵な映画でした!
黒沢作品に不安を感じていた訳では決して無い
のですが、なにぶん古い映画ですので、上手に
気持を合わせられるかどうか、と思っていたのです。
細かな感想は、あえて書かずにおきますね!(笑)
どんな絵になるか……自分でも楽しみなのです^^
8月になったらまた、もう一度見ようと思っています。
                  (別ページより転載)
        
    ◇    ◇    ◇  


おおっ!そうですか・・・・・・もう観ていたんですね。
失望や落胆の感想ではなくて、とりあえずホッとしました(^^)
もしダメな場合は、さらなる候補作品も用意してはいたの
ですが、その必要もなさそうですね(^^)

「隠し砦の三悪人」に欠陥があるとすれば “幾つかの場面
で セリフが聞き取りづらい”という所ですが、このDVDには、
古い映画には珍しく「日本語字幕」がついているので、ぜひ
活用されることをお奨めします。

あっ! 他の候補も検討してみたいと思われたら、どうぞ
いつでも 遠慮なく おっしゃって下さい(^^)
ちなみに別候補として用意したものは・・・・・・ 「12歳の薄幸の
少女と7歳の少年の、泣きたくなるほど素敵な友情」が テーマ
の話で、映画「赤ひげ」の有名なエピソードです。
どちらも、豊かな感受性と聡明さを兼ね備えた梨花さんにふさ
わしい素材と信じ、熟慮のすえ、用意させて頂きました。
by Hiji-kata (2007-06-28 23:07) 

ハジナレフ

はじめまして、梨花さんのブログのリンクからお邪魔させていただきました。
非常に興味深い話をありがとうございます。

黒澤映画は「椿三十郎」と「どですかでん」「まあだだよ」だけしか見てませんが、こちらのお話を読んで「隠し砦の三悪人」「赤ひげ」「蜘蛛巣城」 のDVDをすぐさま注文してしまいました。

海外の物語を日本に置き換え再構築・・・とても参考になる発想ですね。
エピソードを知れば知るほど楽しめる、そんな映画の見方をこれからはしていきたいなあと思います。

これだけ長い文章もとても読みやすく面白かったです。
またお邪魔させて下さい。
by ハジナレフ (2007-09-09 12:14) 

チヨロギ

お誕生日おめでとうございます☆
by チヨロギ (2007-09-09 23:28) 

Hiji-kata

ハジナレフ様  初めまして。
長い文章にお付き合い頂き 感謝します。

私が好きな映画は、古今東西 ゆうに数百本を越える
ほどになりましたが、中でも黒澤映画は“別格扱い”で
今日に至りました。
数本を除き、各作品 数十回ずつ観ていますが、観る度
に新たな発見があり、その魅力は尽きません。
作品によっては、いまだに全容が捉え切れないほどの
厚みと深味を感じ、ぼう然とすることも珍しくありません。
頭が悪いと言えばそれまでですが、できれば諦めずに?
楽しみながら観賞を重ねていきたいと思っています。
またいつか「クロサワ」の話ができたら うれしいです。
by Hiji-kata (2007-09-10 06:37) 

Hiji-kata

チヨロギ様 
「お祝いのメッセージ」ありがとう。
わざわざのご訪問 かたじけない。
暑かった夏も ついに終わりましたね。
ボクの場合、毎年 誕生日が来ると、
季節変わりを実感します。
by Hiji-kata (2007-09-10 06:45)